バロックから古典派へ(From Baroque To Classic school)

 古典主義的なバロック音楽はヘンデルで終焉する。多声的なバロック音楽はバッハで終焉する。18世紀の後半から、イタリア、ドイツ、フランスの各地で、新しい動きがおこってくる。バロックの多声的で複雑な音楽ではなく、メロディーが中心になり、他の楽器はメロディーに従うような明快な音楽様式が生まれてくる。と同時に、バロックの古典的で荘重な様式は敬遠されるようになり、より自然で明朗な音楽が好まれるようになる。このような新しい音楽様式を古典派とよんでいる。古典派の音楽は、ハイドン、モーツアルトなどによって完成される。ハイドン、モーツアルトなどの音楽は後のヨーロッパ近代音楽の基礎になったので「古典派」とよばれるようになった。この「古典」という言葉は、美術用語でいう古典主義とはほとんど関係ないようだ。古典主義の「古典」とは、古代ギリシア・ローマの文芸のことを意味しているわけで、音楽用語の「古典派」とは区別して考えるべきであると思う。

バロック音楽から古典派に変化していった背景には、ヨーロッパの美術の変化があった。バロック様式からロココ様式への変化である。変化はフランスの宮廷美術から起こる。フランスでは、17世紀の荘重な古典様式から、18世紀に入るとより自然で流麗なロココ様式に変化していく。フランスの啓蒙思想家ルソーは、それまでの堅苦しい理念を重んじる古典主義を批判して、人間の感情に即したより自然な文化を支持する。ルソーの「我感じるゆえに我あり」「自然に帰れ」という言葉は彼の思想をよく表している。このような趣味と思想の変化は、フランスの宮廷では、室内装飾などが直線的な形から、自然な曲線的な形になり、美術も、古代の建築を背景にした絵画から、緑の自然の中に、くつろいだ貴族や神々が描かれるようになる。ロココ趣味は、緑の自然の発見であり、より自然な人間の動きの発見であった。このようなロココ様式は音楽にも影響を与え、音楽も、より自然で流麗な古典派に変化していった。

ロカテルリ(1695-1764)のフルートソナタ

 ロカテルリはイタリア人で、若い頃コレルリに師事して、12曲からなる合奏協奏曲集が有名である。その中でクリスマス協奏曲が特によく知られている。彼はヴァイオリンのヴィルトオーゾ(名人)と知られ、ヨーロッパの各地を楽旅している。ここでは、彼のフルートソナタを取り上げてみたい。彼は全部で18曲のフルートソナタを作曲しており、どれもが傑作でマンネリズムは最小限に抑えられている。作風は、形式的にはコレルリやヘンデルの緩急緩急の教会ソナタの様式に従っているが、作風はバロックを超えて前古典派的な雰囲気が濃厚で、明快な爽やかさはハイドンやグルックに接近している。彼の年代が18世紀の前期から中期にかけてであり、バロックから前古典派に移行する年代に相当している。視覚的にみても、荘重なバロックスタイルより自然なロココスタイルに似合っている。
作品2のフルートソナタの第二番♪♪の第一楽章の出だしは特に美しく、モーツアルトのパッセージを連想することは不可能ではない。


ポモナとウェルトゥムヌス    ブーシェ


フランソワ・ブーシェの作品である。18世紀の文芸を語るときブーシェなしでは不可能であろう。この作品も彼の神話的な題材の一つである。男を近づけようとしなかったポモナに、ウェルトゥムヌス(園芸の守護神)は老婆の格好に変装してポモナに接近し、ウェルトゥムヌスが如何にポモナを愛しているかを説得した。そして、若者の神の姿に戻ったウェルトゥムヌスは、ポモナを得ることに成功した。


                         ポモナとウェルトゥムヌス

                         ニンフ・ポモナよ ラティウムで
                         美はしきとこ 比類なし
                         果実を愛し 園芸に
                         命を捧げ 奉る

                         肌の優しさ 綿のごと
                         花の顔(カンバセ) 望月の
                         紅をさしたる ごとくして
                         菫のごとく 可憐なり

                         水仙のごと 慎ましく
                         林檎のごとく はじらいて
                         梨花のごとくに 清らなり
                         園に籠もりて 暮らしたり

                         神の好意も 避けがちに
                         愛の求めも 遠ざけて
                         園芸の神 ウェルトゥムヌス
                         老婆に化けて (ポモナに)近づきぬ

                         老婆は常に (ポモナに)愛勧め
                         ウェルトゥムヌスの 誠意説き
                         園芸の神の 自在説き
                         (ウェルトゥムヌスの)ポモナを望む 愛を説く

                         ウェルトゥムヌス 若者にて
                         ポモナの前に 現れぬ
                         力ずくにて 成さんとすが
                         その必要は なかりけり
                         (ポモナが)心奪われ 時めきて
                         ウェルトゥムヌスを 受け入れぬ


古典派のはじまり(The Beginning of Classic School)

 なんといっても、イタリアは音楽の先進国であった。古典派の発端はイタリアの作曲家ペルゴレージ(1710〜1736)の「奥様女中」に始まる。「奥様女中」は短いオペレッタであるが、ソプラノのアリア♪♪が後のモーツアルトを想わせるような、自然で明朗なメロディーであったために反響を呼びヨーロッパの各地で演奏される。特にパリで演奏されたときには、フランスの古典的な音楽を擁護する保守派と、イタリアの明快な音楽を支持する派との間で論争になる。ルソーは熱心なイタリア派であった。

イタリアの古典派(Italian Classic School)

 音楽史では、イタリアの古典派の作曲家として、パイジェルロ、ボッケリーニ、チマローザなどの名が出てくるが、現在、演奏されたり、レコーディングされたりすることは極めてまれである。しかし、イタリアの先進的な音楽が、ハイドンの前期から中期にかけて、モーツアルトのザルツブルク時代に、多大な影響を与えていることは確かである。イタリアの古典派音楽は、概ねクリスチャン・バッハのスタイルに似ており、オペラが中心であり、ロココ調であり、従って前古典派のカテゴリーに入れられることもある。モーツアルトも、クリスチャン・バッハも、グルックも全て、イタリアで古典派風のオペラを学んでいるわけで、イタリアの古典派音楽がいかに進んでいたかということと、当時のイタリア音楽が、全ヨーロッパ的な影響力をもっていたかを理解することができる。

ガルッピのクラヴサン協奏曲(Galuppi's harpsichord concerto)

 ガルッピ(1706〜1785)は、ヴェネチアの前古典派の作曲家であるが、音楽史から云うとマイナーな人物である。彼の作品の多くはオペラであるが、近年クラヴサン(チェンバロ)の音楽が、古典派の傾向をもっとも早くから示していることで認識されるようになった。ここでは、クラヴサン協奏曲を取り上げて、古典派的な特徴を見てみることにしよう。

まず、バロック音楽では、クラヴサンは通奏低音の楽器であり、クラヴサンが協奏曲のソロを弾くことはまれであった。しかし、ガルッピはクラヴサンをピアノのように協奏曲の独奏楽器として使用している。しかも、クラヴサンの右手はメロディーを弾き、左手は伴奏といいうように古典派の特徴を表している。また、オーケストラもクラヴサンの伴奏として従属的な立場に置かれている。これらは、いうまでもなく、近代的な管弦楽法を予感させるものである。さらに、協奏曲は急緩急という楽章からなり、ほとんどが明快で爽やかな雰囲気をもっている。中間の楽章は歌うような愛らしい緩やかな音楽である。この様にしてみると、ガルッピのクラヴサン協奏曲が、後のモーツアルトの協奏曲にいかに似ているかが認識できる。それでは
クラヴサン協奏曲ト長調・ハ長調♪♪を聞いてみよう。


                                         変奏曲       ©竹宮恵子

                                              

この協奏曲を聞いていると、いかにもイタリアらしい、明快で爽やかな、どことなく雅やかな雰囲気が横溢している。心が晴れ晴れするような明るさがある。とりもなおさず、この様な雰囲気は、ロココスタイルを基調にした古典派音楽の一般的な雰囲気でもある。

竹宮恵子の「変奏曲」は、ショパンの墓に二人の若者が花束を捧げている光景を描いている。背景は雪が積もっているが、光景は明るく爽やかで、どことなく雅やかな雰囲気が漂っている。明快なガルッピのクラヴサン協奏曲に、似つかわしい絵画ではないかと思う。


                          真の愛

                    夜来の吹雪 夢のごと
                    雪景色にぞ なりぬれど
                    朝日の光 眩しくて
                    覆ひたる雪 輝けり

                    空晴れ渡り 清々し
                    雪に映へたる 空の色
                    肌寒くとも 日の光
                    春の近きを 告げんかな

                    小さきころより 憧れる
                    ショパンの墓碑に 花捧げ
                    ピアノの詩人に 祈らんや
                    授けよかしや 霊感を

                    パリで出逢ひし 若人よ
                    吹雪もやがて うららかに
                    苦悩もやがて 歓喜(ヨロコビ)に
                    描けよかしや 芸術に
                    真(マコト)の愛の 永遠(トワ)なるを



ボッケリーニ(Boccherini)

 現在、イタリア古典派で最も有名な人物はボッケリーニ(1743〜1805)であろう。彼のチェロ協奏曲が、ハイドンのチェロ協奏曲と並んで、時折、演奏されたりレコーディングされることがあるからである。ボッケリーニのチェロ協奏曲は、古典派のチェロ曲として知られている。イタリアの古典派の作曲家のほとんどが、オペラ作家であるのに対して、ボッケリーニは、作品の大部分が器楽曲であり異色な存在になっている。それは、ボッケリーニがチェロの名演奏家として歓迎されたことにもよるが、彼は、スペイン大使の薦めによりスペインの王家に行くが、すでに、ドン・カルロス4世の宮廷音楽家として、ブルネッティが信望を得ており、ボッケリーニは、王弟ルイスの室内楽音楽家としての地位に甘んじなければなっかた背景があると思われる。彼の作風は、明快で爽やかな典型的な古典派風の作風を示している。ソナタ形式の芽生え、強弱のアクセント、独奏楽器の華やかさという点などに古典派の構成的な特徴を表している。また、明るさに含まれる抒情性などイタリア的な雰囲気をもっている。


ここでは、ボッケリーニのフルート協奏曲ト長調第1楽章♪♪の風景をみてみよう。第1楽章は、いかにもイタリア風な5月の新緑を思わせるような明朗な曲である。ザルツブルク時代のモーツアルトのフルート協奏曲ともよく似ているが、モーツアルトのフルート協奏曲は、もっと流麗でありロココ調が濃厚に反映している。ボッケリーニのフルート協奏曲は、より自然的であり、ハイドン的であると云えるかもしれないが、明快なメロディーに仄かな抒情性が感じられるのが、いかにもイタリアの作曲家らしい。

                                                    自選複製原画集      ©萩尾望都    

                                       

この萩尾望都の原画には、次のような詩句がのせられている。
   
                    想ひ 出づる 
                    海の 遙かなる音色
                    風と 砂との 
                    心地よき ふれあひ
                    波の 打ちては返す潮騒
                    遠き 遙かなる貝の音(ネ)
                    水鳥の 楽しきたはむれ 
                    雲や雨の 動揺
                    光や人の 歓声 
                    一幅の 絵画のごとく
                    めぐりくる 夏の 
                    遙かなる 思ひ出   


水色の海の流れは、空の碧さであり、少年の緑の髪と服は、夏の自然でもあり、澄んだ少年のまなざしは、永遠の純真さでもある。ボッケリーニのフルートの音色は、そのすべてを美しく物語っている。少年時代の無垢なおとぎ話のような、すべてが明るく、そして憧れに満ちていた日々を・・・

フルート協奏曲ニ長調♪♪

 この協奏曲は、質の高さではモーツアルトのフルート協奏曲と比較しても何ら遜色はない。透明な明るさと仄かな抒情性は、如何にもイタリアの古典派らしい。華麗なフルートのカンデンツァや全曲が20分ばかりの規模は、当時としては一流の作品である。第二楽章の歌うようなメロディーも美しい。朝日に照らされた花壇をみているようである。第三楽章も華麗ですがすがしい。

Passe Compose   ©竹宮恵子


                              洗礼者ヨハネ

                            敬虔なヘブライ人(ビト)と エリザベスとの間に
                            生まれし 洗礼者ヨハネよ
                            エリザベス 不妊の女と呼ばれたるが
                            天使ガブリエルの お告げにより
                            子 授かりぬ
                            エリザベスの 親族なりしマリアも
                            天使ガブリエルの お告げより
                            神の御子を授かり給ふ
                            御子イエスと エリザベスの子ヨハネは
                            伴に育ちたり

                            ヨハネ 荒野で呼びかけ
                            悔ひ改めて 
                            罪の赦しを得る 洗礼を施せり
                            イエスも ヨハネの洗礼受けたり
                            視よ 聖霊が鳩の如くに
                            イエスに 下りたり
                            そをみたる ヨハネ
                            イエスの 神の御子なるを
                            言明し
                            自らは イエスの靴ひもをとく 
                            値打ちもなしと 述べたりき

                            そのころの 領主ヘロデ
                            兄を 殺したりて
                            兄の 美しき妃と伴に
                            王位に 就きたりき
                            ヨハネ そを非難して
                            悪しきこと 国に起こりたるを
                            預言せり
                            そを 聞きたるヘロデは
                            遂にヨハネ 捕らへて
                            獄に 入れたりき

                            妃の 娘であるサロメ
                            義父のやらしき目つきに 幻滅して
                            捕らえられたる ヨハネに面会す
                            視よ 美(ウル)はしき預言者なり
                            サロメ ヨハネを愛したりけり
                            しかし ヨハネはサロメの母の
                            忌まはしきこと 述べたりき

                            初めて逢ひし ヨハネ様
                            高貴なること 預言者の
                            神のお告げを 聞く如し

                            み使ひのごと 美はしき
                            緑のまなこ すがすがし
                            その深きこと 空の如し

                            義父(ギフ)より受ける 屈辱と
                            不義の母の子の 忌まわしさ
                            憐れみ給へ 吾の身を

                            一目みたとき 愛したり
                            貴方の姿 常にあり
                            吾の心を 酌み給へ

                            煌(キラ)めく天の 星々よ
                            大地に沈む 日輪よ
                            春に咲きたる 花の精よ

                            ヨハネの心 向け給へ
                            吾愛すごと ヨハネより
                            愛されんこと 叶へかし

                            ヨハネ サロメの心酌みしかれども
                            ユダヤ民族に 大いなる災ひ
                            起こることを 預言し
                            国と民のために 説きたりき
                            サロメ 腹立ちて
                            ヘロデ王に ヨハネの首を
                            皿に載せ 来たることを
                            求めたり
                            かくのごとくして 
                            ヨハネ 逝きたりや

                            若かりし サロメの心 酌みしかど 
                            イスラエルの為 敢(ア)へて説かんや

                            偉大なる 預言者なれど 御子(イエス)の為
                            道整へて 先に逝きたり


チマローザ(1749〜1801)

二本のフルートの協奏曲ト長調♪♪

 チマローザのフルート協奏曲も、さらにモーツアルトのフルート協奏曲を似ている。明朗快活なロココスタイルを採っている。活躍したのも、ほぼモーアルトと同じころで、ロシアの宮廷の音楽家として、さらにウィーンの宮廷楽長として仕えた。牧歌的な曲想でメロディーも美しく、当時のロココスタイルをよく表している。

春      フランソワ・ブーシェ


                             春の夢

                           行方(ユクエ)も知らぬ 春霞
                           木々の緑の 目に滲(シ)みて
                           春の女神の フローラを
                           待ち望みたる ニンフらよ

                           フローラの置き 忘れたる
                           花園湧きぬ 泉水を
                           ふたりのニンフ 飲みたれば
                           エキサイトして ふれ合はん

                           ふたりで伴に 花かざし
                           花の顔(カンバセ)を みつめたり
                           甘き水飲み 酔ひしれて
                           伴にまなこは 潤みたり

                           熱き息をば 耳元に
                           囁(ササヤ)く如く 吹き込みぬ
                           甘き言葉に 酔ひしれて
                           優しき愛に 包まれん

                           葡萄の房の ふた球(タマ)を
                           同時につかみ さするれば
                           甘き快楽 酔ひしれて
                           愛されたりし 心地する

                           柔らかき腕 綿のごと
                           み腕に沿って キスすれば
                           甘き心地し 酔ひしれて
                           貴女のものに なりたりや

                           貴女の衣の 裳裾(モスソ)より
                           手を忍ばせば 丘に向け
                           甘き歓び 襲はれて
                           女の歓び 間近なり

                           み足に沿って 撫でたれば
                           ヴィーナスライン 限りなく
                           甘き官能 走りゆき
                           潤ひて来る 気持する

                           首筋よりも 背中にて
                           愛撫したれば 清らなる
                           甘き心地に 癒やされて
                           天使の翼 生えんとす

                           帰り来たりし フローラよ
                           ふたりのニンフの 姿みて
                           園の泉水 振りかけん
                           ふたりの愛の 深まりぬ

                           翼の生えた ニンフらよ
                           愛の化身に なりたりや
                           彼(カ)の花園に 運ばれん
                           春霞たる 夢の日に



イタリアのマンドリン協奏曲

 リュート族の楽器であるマンドリンは、18世紀のころ流行する。伴奏楽器に使用されたり、弦楽合奏の独奏楽器と使用されるようにもなる。音色は明るく開放的であり、古代ギリシア・ローマの竪琴に似ているのではないかと思ってしまう。フランスでも、18世紀初めのワトーの絵画にマンドリンを持った芸人風の男がよく出てくる。イタリアでは、特にナポリで大流行して、幾つかのマンドリン協奏曲が残されている。

マンドリン協奏曲ト長調♪♪

作曲家は、カウディオーソと言われているが、正確なことは判っていない。曲のスタイルから18世紀後半の古典派の時代の楽曲であることが判る。完成度の高い曲であるために、チマローザの曲ではないかと言われるぐらいである。

明るく開放的な出だしであるが、如何にもイタリアの古典派の作品らしい品位を保っている。マンドリンの独奏の部分に入っていくが、音色は甘く時に清らかでさえある。ロマンチシズムを感じさせ、現代にも愛好家がいることがよく理解出来る。ただし、19世紀以降のトレモロ奏法は、まだ無かったようである。第一楽章と第三楽章の華やかな出だしに比べて、第二楽章の歌うようなメロディーは、如何にもイタリアの音楽らしい。

バッコスとヴィーナスの縁結び    コワベル


                              ヴィーナスとバッコス

                            愛と美の神 ヴィーナスよ
                            恋の神たる アモールを
                            率いて恋の 成就をぞ
                            叶へたりける 女神なる

                            ワインの神の バッコスよ
                            ワインによりて 人々を
                            陽気にさせる バッコスよ
                            ヴィーナスとの 盟友よ

                            つがひの鳩と 伴にゐる
                            美(ウルワ)はしきかな ヴィーナスよ
                            汝の力 酒なくば
                            現れること なからんや

                            ワインのグラス 持ちたりし
                            花紅の 顔(カンバセ)よ
                            優雅なりける 腕の線
                            豊かな胸は 若々し

                            ニンフの如く ふくよかに
                            腰ひきしまり 腰にまく
                            薄き布さへ 短くて
                            美はしき足 はみ出しぬ

                            バッコスと伴 杯を
                            酌み交はしてぞ 快活に
                            豊饒ならん ヴィーナスよ
                            恋の願ひも 叶はんや

                            ワインを運ぶ キューピット
                            三美神には 棚からぞ
                            葡萄を手より 渡したる
                            バッコスの虎も (葡萄に)ありつきぬ

                            ワインと食事 摂りてこそ
                            陽気なりたり ヴィーナスよ
                            恋の願ひを 聞きとどけ
                            奇跡を起こし 叶へたり


マンドリン協奏曲ヘ長調♪♪

作曲はガッベローネ(1727〜1796)と言うイタリアのナポリの作曲家であり、オペラや宗教曲なども残している。ある程度の落ち着きがあり、完成度の高い曲であり、アレグロの第一楽章と第三楽章は、活気の中にも品位がある。第二楽章の清らかとも言える甘美なマンドリンに魅了されてしまう。ガルッピの協奏曲と同じような、明朗快活の中に仄かな抒情性を含んでいる。

法廷のプリュネー      ジェローム


                              プリュネー

                            アテナイに 名を馳せた
                            踊り子なりし プリュネーよ
                            天使の如く 美はしき
                            少女の如く 可憐なり

                            少年のごと 穢れなく
                            薄月のごと はにかみて
                            水仙のごと 清らなり
                            華やかなこと 薔薇の如し

                            その余りにも 美はしき
                            画家アペレスの モデルなり
                            プラクシテレス(彫刻家)の モデルなり
                            作家に霊感 与へんや

                            プラクシテレスの 彫刻の
                            モデルになりき プリュネーよ
                            その(彫刻)余りにも 美はしき
                            社(ヤシロ)に置かれ 拝まれん

                            クニドスにある ヴィーナスは
                            万(ヨロズ)の人に 拝まれぬ
                            されどプリュネー 神々を
                            冒涜(ボウトク)せんと 誹謗(ヒボウ)さる

                            召還されたり 法廷に
                            プリュネー助く 弁護士は
                            無罪説くため 法廷で
                            彼女の衣 はぎ取らん

                            その余りにも 高貴なる
                            美はしさゆゑ 感嘆の
                            波法廷に 満ち渡り
                            一部は既に 肯(ウナズ)きぬ

                            遂に法廷 赦したり
                            穢れなき女(ヒト) プリュネーよ
                            汝を救へり 汝の美
                            永遠(トワ)を語らん 汝の美


ビオッティ(1755-1824)

モーツアルトより一年早く、イタリアのトリノ付近で生まれた。18世紀の後半から19世紀の初頭のころヴァイオリンのヴィルトゥオーソ(天才演奏家)として活躍した。父親から子供の頃からヴァイオリンの手ほどきを受け、8才の時にはヴァイオリンを達者にひいたという。11才でトリノに出て、貴人たちをパトロンに持ち、同地の高名なヴァイオリニスト・プニャーニに師事して作曲なども学んだと想像される。14才で最初のヴァイオリン協奏曲第三番イ長調を作曲した。

プニャーノはこの天才少年を連れて、ジュネーブ、ドレスデン、ベルリン、ワルシャワ、ペテルブルグと楽旅して、やがてパリに乗り込んだ。パリでは、コンセール・スピリチュエルの演奏会に出席して、ヴァイオリンのヴィルトゥオーソとしてパリの聴衆の前でデビューした。時に27才であった。

その後、ヴィオッティは、フランスのパリと深く関わっていく。1974年からマリー・アントワネットの宮廷でのソリスト、ハイドンのパリ交響曲の演奏では、指揮も行った。その後イタリアオペラにも関わったが、1789からのフランス革命勃発で、ロンドンに逃れて、ロンドンでもデビューして、たちまちヴァイオリン協奏曲で大成功を博した。ハイドンのロンドン交響曲にも出演して、キングス・シスターでオペラの指揮もした。

しかし、突然ビオッティはパリの革命指導者と連絡があるという嫌疑をかけられ、ロンドンを留守にして、ドイツのハンブルクに静居した。晩年はロンドンに帰ったが、晩年のヴァイオリン協奏曲は地味になり、時代の精神とも合わなくなり、失意のうちに寂しく亡くなった。

ヴィオッティは、イタリア出身であったが、フランス音楽院(コンセルヴァトアール)にビオッティの弟子を三名(一人はクロイツェル)教授にして、コンセルヴァトワールに長期に多大の影響を与えている。

ビオッティは生涯に29のヴァイオリン協奏曲を残している。23番や22番は、ヴァイオリンのコンクールの課題曲になっているのでよく知られている。

ヴァイオリン協奏曲8番ニ長調♪♪

第一楽章アレグロヴィヴァーチェ
古典派のロココスタイルの華やかな楽章。ビオッティはモーツアルトの一年前の生まれなので、古典派のロココスタイルの盛んな時代であった。12分の規模の大きな楽章である。

第二楽章アンダンティーノ
典型的なロココスタイルであり、詩情豊かな楽章。初期のモーツアルトのヴァイオリン協奏曲に似ており、滋味豊かな人間性を感じさせる。

第三楽章ロンド
華やかな印象があり、優雅で美しい曲である。




ヴァイオリン協奏曲11番イ長調
♪♪

第一楽章アレグロマエストソ
優雅なロココスタイの楽章でメロディーが美しい。あでやかな曲である。モーツアルトの初期のヴァイオリン協奏曲に非常に似ている。高音部の技巧が素晴らしい。

第二楽章アンダンテ
やはりロココスタイルの優雅な楽章。メロディーが美しい。

第三楽章ロンド
音楽性の高いアレグロで優雅なこと極まりない。




ヴァイオリン協奏曲第2番イ長調♪♪

第一楽章アレグロアッサイ

華やかさの目立つ優雅な曲。元気のよいヴァイオリンの独奏部分である。発展部は短調になっており、作曲技術でも工夫されている。第一主題を繰り返す。カデンツァも華やかである。

第二楽章アダージオ
歌うような緩徐楽章である。

第三楽章ロンド
舞踊的な華やかなロンドである。




ヴァイオリン協奏曲13番イ長調♪♪

第一楽章アレグロブリリアント
爽やかで華麗な音楽が自然に流れている。実に快適な音楽である。バイオリンの音も爽やかである。

第二楽章アンダンテ
歌うような流麗な楽章である。暖かい滋味のある素晴らしい楽章である。モーツアルトのアンダンテに似ている。

第三楽章メヌエット
爽やかな舞踏的な音楽である。音楽的な展開も自然である。

レダと白鳥            フロンソワ・ブーシェ



ヴァイオリン協奏曲18番ホ短調♪♪

第一楽章アレグロ
流れの良い短調で始まる異色の楽章である。展開もごく自然に行われている。後に長調になる。短調に変わり終了する。

第二楽章アンダンテ
この頃からロココスタイルを脱して、ロマン派的なフレーズが見受けられる様になる。写実的なロマン派の精神である。

第三楽章プレスト
ベートーヴェンの終楽章的な力強い音になってくる。




ヴァイオリン協奏曲第20番ニ長調
♪♪

第一楽章アレグロ
壮大なロマン派の協奏曲の展開になってくる。曲にドラマが秘めているようなロマンチシズムである。それでも、初期のヴィオッティの様な美しさも失われてはいない。

第二楽章アダージオ
重みのある雲のかかったようなアダージオであり、19世紀ロマン派の内容になっている。ヴァイオリンの音は甲高い。

第三楽章ロンド-アレグレット
かなり構成に優れたロンド形式の楽章。音楽性は高い。ベートーヴェンの協奏曲の三楽章にあっても可笑しくない。明るい伸展性を感じさせる曲である。




ヴァイオリン協奏曲23番ト長調♪♪

第一楽章アレグロ

きびきびした軽快な曲である。ヴァイオリンはよく歌っている。高音部が技巧的である。管弦楽は重厚で楽章の高揚を図っている。ヴァイオリンの音は技巧的であるが、よく歌っており演奏には高度な素養が入りそうである。前期ロマン派の傑作の一つである。カンデンツァも堂々としている。

第二楽章アンダンテ
ヴァイオリンの歌になっている。繊細な感情が込められている。

第三楽章アレグロ
軽快で爽やかで、ヴァイオリンの音が美しい。




ヴァイオリン協奏曲第6番ホ長調
♪♪

第一楽章アレグロ
優雅なロココスタイルな出だしである。華やかなヴァイオリンが美しい。

第二楽章アダージオ
ロココスタイルの優雅な歌。ヴァイオリンもよく歌っている。

第三楽章ロンド-アレグレット
優雅な舞踏会の光景が思い浮かぶような楽章。




ヴァイオリン協奏曲第17番ニ短調
♪♪

第一楽章アレグレット
哀感のある美しい曲。ヴァイオリンは哀歌を歌っている。

第二楽章アダージョ
ヴァイオリンの哀歌

第三楽章プレスト,アジタート
ドラマを想像したくなるような短調の楽の音




ヴァイオリン協奏曲第22番ニ短調
♪♪
ブラームスが絶賛した作品

第一楽章モデラート
13分という長い楽章。哀調を帯びた出だし。ショパンのピアノ協奏曲第二番を想わせるロマンチックな曲。ドラマチックな恋愛が主題か・・・

第二楽章アダージオ
夜の花園で出逢った想い出か・・・全てはヴァイオリニストに委ねられている。

第三楽章アレグロアッサイ
愛はさらに烈しく燃える・・・。本当の愛を目覚めていなかった愚かさよ・・・








Top page