フォーレ(1845〜1924)

フォーレ 23歳 1868年

 フォーレは、ピレネー山脈に近い南仏の街パミエに生まれた。小さいころ通った学校は修道院の後につくられたもので、音楽教育が盛んであった。学校に視察に来た名士がフォーレのピアノの天分に注目し、フォーレはパリの古典宗教音楽学校に通うことになり、9歳から20歳まで本格的な音楽教育を受けた。

音楽学校での最大の出来事は、ピアノ科の教師としてサン・サーンスが招聘されたことであった。フォーレ15歳、サン・サーンス25歳の時であった。フォーレとサン・サーンスの出会いは決定的であった。二人の友情はすたれることなく生涯続くことになる。二人は互いに研鑽し合い近代フランス音楽に大きな足跡を残すことになる。

幾つかの教会のオルガニストを勤め、1896年パリ音楽院の作曲家の教授に任命される。1905年には院長に就任して、ラヴェルなどの多くの有能な弟子を育て1920年までフランス音楽の最高地位にあった。


レクイエム

         聖母マリアと羊飼いベルナデット

 レクイエムは、1887年に母親が亡くなり、そのころから本格的に作曲され、1888年にフォーレが勤めていたパリのマドレーヌ教会で初演された。

フォーレは、カトリックのレクイエムの「怒りの日」を省き、「リベラ・メ」(我を赦し給え)と「イン・パラディスム」(楽園にて)を付け加えた。レクイエムといえば、それまで悲愴な音楽が多かったが、フォーレはカトリックの信仰により忠実にレクイエムをつくり変えたといってもよいと思う。

カトリックの信仰では、信者は救われて亡くなり墓に葬られ、最後の審判の時に甦って、主イエスと伴に永遠の天国に迎えられることになっている。したがって、死は決して悲劇ではない。むしろこの世の労苦から解放されて、浄福の天国が保証されているのである。

だから、本来レクイエムは、清らかで明るいものでなければいけないとフォーレは考えていたのである。フォーレのレクイエムは、南仏的な明るさと柔らかさが横溢している。

ルルドはピレネーのフランス領にあるカトリックの聖地である。羊飼いであったベルナデットに聖母が出現して、ここから出る泉の水を飲めば、病人が癒されるとお告げがあった。ここで多くの奇跡が起こり、今では世界的な聖地になっている。

入祭唱とキリエ
敬虔な雰囲気で始まり静粛な気分が支配している。

奉献唱
神に犠牲を捧げる「奉献」でミサの中で最も厳粛な秘蹟である。神秘的な部分でもある。

サンクツス♪♪(聖なるかな)
一転して、南仏的な明るさになり、ボーイソプラノが清らかで、魂が祝福されて天上に昇っていくいくような印象を受ける。

ピエ・イエズ♪♪(慈悲深きイエスよ)
ボーイソプラノの清らかな祈りが心に滲みるようである。

アニュス・デイ♪♪(神の子羊)
永遠の安息を求める祈りで始まる。南仏的な明るさがある。祈りは次第に深まっていく。主イエスの犠牲により救われたことが厳粛に歌われる。初めの明るい祈りに戻る。

リベラ・メ(我を赦し給え)
最後の審判が歌われる。神の怒りが地上に満つことを意味する。このレクイエムの中で唯一悲劇的部分である。

イン・パラディスム♪♪(楽園にて)
ボーイソプラノが清らかに天国の安息を祈る。明るく曲を終わる。



ヴァイオリン・ソナタ第一番

 フォーレは、サン・サーンスやシューマンのロマン主義から出発した。ヴァイオリン・ソナタ第一番は、初期の作品であり、ロマン主義的な傾向があり、フォーレの特徴である色彩的な和声とロマン派的な要素が融合しており、フォーレの作品の中でも最も多く演奏される曲目である。フランクのヴァイオリン・ソナタとよく比較されるが、フランクの作品は、フォーレより遅れて10年後に作曲されている。フランクがフォーレの作品の影響を受けているのである。
                                 

若き女と犬                ルノアール


第一楽章♪♪
出だしのピアノの和声の筆致は、色彩を連想させる。そしてヴァイオリンの主題が現れるが、シューマンのヴァイオリン・ソナタを連想させるようなロマンチックなメロディーである。次第に濃厚な感情に高まっていく。

野原は天国の象徴でもある。「若き女と犬」にたたずむ女性は、翌年ルノアールと結婚する最愛の女性アリーヌ・シャリゴーである。何気ない描写の中に親密さが溢れている。また、ルノアールの緑の燃えるような色彩感覚がさえている。このヴァイオリン・ソナタのみすみずしく透明な感性は野原の緑と浪漫をイメージさせている。

フォーレのヴァイオリン・ソナタも色彩的な感覚の中で、濃厚なロマンが語られている。

                              画家のモデル

                            ルノアールには トップのモデルありき
                            都会にて育ちたる美人の シュザンヌ・ヴァラドンなり
                            ルノアールも 好意を寄せたりけり
                            ルノワール 丸く愛らしき顔した アリーヌ・シャリゴにも惹かれたり
                            
                            アリーヌ・シャリゴも ルノアールを愛するゆえにモデル務めたり
                            顔(カンバセ)から 笑顔が落ちて来そうなモデルなり
                            その愛らしく ふくよかなるイメージは 
                            ルノアールの 求めしものなり

                            ルノアール 印象派の限界を克服するため
                            イタリア旅行に 出かけたり
                            アリーヌも婚前旅行として 伴に出かけたり
                            ルネサンスの ラファエロのフレスコ画や
                            ポンペイの壁画に 感銘を受けたりき

                            イタリアのナポリで 「金髪の浴女」を
                            アリーヌをモデルにて描きたり
                            海の豊饒(ホウジョウ)と モデルのふくよかさが
                            一体となりたる 傑作なり

                            アリーヌは わだつみ(海)の女神になりにけり
                            海の豊饒と 女性の生命力は
                            完全に一つに なりたりや
                            その明るさと すこやかさも

                            その後柔らかひ筆づかいに 磨きかかりて
                            傑作次々と 生まれんや
                            「イレーヌ嬢」「テラスにて」などの傑作 生まれたり
                            「ピアノの前の少女たち」は国宝に指定されたり

                            「テラスにて」が描かれたころ
                            「若き女と犬」も描かれたり
                            燃えるような 緑のタッチの輝きは
                            「テラスにての」燃えるようなタッチと 似たりけり

                            野原で花を持ちたるは アリーヌなり
                            このころパリで 伴に街を歩きて絵を描きたり
                            緑の中に 溶け込んだアリーヌ
                            浮き上がりて 存在感を留めたり

                            モデル兼妻アリーヌは 
                            ルノアールの インスピレーションなり
                            アリーヌは 三人の母親になりたり
                            されども 何の宿生か・・・
                            アリーヌ齢五十六歳にて 天に帰りたり
                            糖尿病なりしが、一切ルノアールに知らせざりき
                            年頃の子供を 残しての悲しき別れなり
                            また最愛の夫を残しての つらき別れなり
                            
                            晩年は リウマチで悩みたれども
                            絵に対する情熱は 衰えじ
                            ルノアールの絵の 何ぞ明るきかを聞きたると
                            ルノアール曰く 「つらきは人生のみで十分なり
                            芸術こそ愛と希望に燃ゆるべし」と


第二楽章
出だしのヴァイオリンの主題は、過去を回想するような沈んだ雰囲気である。次第に過去の幸福な世界に進んでいく。そして、また沈んだ回想になる。

第三楽章
スケルツォの楽章である。スケルツォが終わると、ロマンチックな主題に変貌する。そしてまたスケルツォになる。

第四楽章♪♪
明るい第一主題から発展して、次第に濃厚な愛の感情に高まっていく。ピアノの和声は色彩的で絵画を連想させる。第一楽章の風景にいちばん近い楽章であると思う。

花摘む乙女たち    ルノアール

ルノアールの比較的晩年の作である。少女の横顔の奥ゆかしい美しさもさることながら、象徴化された構図の中で深いロマンチシズムを感じさせる作品である。若くみずみずしいルノアールから、濃厚なロマンチシズムを語るルノアールが見え隠れしている。


                              花摘む乙女

                            街より来たる 乙女たち
                            真珠(シラタマ)のごと 顔(カンバセ)よ
                            絹の衣に 包まれて
                            美しきみ手で 花を摘む

                            春もたけなは 朧なり
                            春の女神の フローラよ
                            み手より花を 咲かせませ
                            乙女の願ひ 叶へませ

                            白き衣手 ピアノ奏く
                            深き窓辺の 令嬢よ
                            誰をか恋して 夢にみて
                            ピアノ奏かんや ひとりだけ

                            ピアノ教師の 青年を
                            密かに想ふ 初恋よ
                            彼も汝に 夢中なり
                            汝の顔に 彼の顔
                            今にも触れたる 心地かな

                            胸の谷間に 視線ゆき
                            花の咲かんと 想ひする
                            身体(カラダ)すり寄り 愛し合ふ
                            二人はすでに 恋人なり

                            この花摘んで あの人へ
                            捧げ奉らん 今度こそ
                            汝愛すと 告げまほし
                            胸の秘ごと 耐えられず

                            あゝ求めんや みつめられ
                            手を優しくも 握られて
                            胸抱(イダ)かれて 熱ひキス
                            愛撫されんこと 深き谷

                            守護の天使よ 導きて
                            二人を伴に 花壇にて
                            月の光の 明かりにて
                            永遠(トワ)の愛にて 結べかし


ヴァイオリン・ソナタ第二番ト短調Op.108♪♪

第一番から40年ほどたった晩年の作品である。フォーレは晩年になり難聴になり、高音と低音の音程が狂い、耳で聞いた音を遮断しなければ、作曲することが不可能になる。しかし、フォーレは室内楽において、創作欲は衰えず、室内楽の半分以上が晩年の作品である。聴力を失ったフォーレは、紙とペンだけで作曲をしなければいけなかった。

そのせいか、作品は内向的になり、甘さがなくなり、抽象的になり、難解になった。普通のコンサートで演奏される曲目は初期か中期の作品である。このヴァイオリン・ソナタ第二番も、難解で容易には把握出来ない。しかし、それまでの作品と共通している特徴もある。メロディーより色彩的な和声が先行していることである。

フォーレが活躍した時代は、フランスでは印象派のモネやルノアールの活躍した時代と重なっている。印象派も物の輪郭より色彩の印象を重視した。その点で、フォーレの作品は初期から晩年まで印象派の作品と共通性があり、印象派の作品を見ることが、フォーレの作品を理解する手段になることがある。

第一楽章アレグロ ノン トロッポ
不可解なピアノの独奏で始まるが、ヴァイオリンは美しく、ピアノの色彩的な和声と融合している。

第二楽章アンダンテ
ヴァイオリンはゆっくりと抽象的なメロディーを奏でている。晩年の曲としては珍しく比較的明るいメロディーである。

第三楽章アレグロ ノン トロッポ
抽象的であるが、明るい雰囲気の楽章である。花園の風景でも連想したくなる。

薄紫のアイリス   モネ


モネの晩年の作品であるが、薄紫のアイリスは画面の色彩に溶け込んでしまっている。モネも20世紀に入るとこのような抽象的な作品を描くようになる。フォーレの晩年が20世紀に入るのと共通している。


ピアノ五重奏曲第一番ニ短調Op.89♪♪

フォーレの室内楽では最高傑作ではないかと思う。中期の最後の作品である。作品100番台になると、後期の晩年の作品になる。このピアノ五重奏曲は、四大ピアノ五重奏曲に含まれている。シューベルトの「鱒」、シューマンのピアノ五重奏曲、ドボルザークのピアノ五重奏曲、フォーレのピアノ五重奏曲第一番がそれである。

第一楽章モルト モデラート
美しいピアノのトレモロで始まり、ヴァイオリンがゆっくり音を刻む。まるで、水面の睡蓮を見ているようである。次第にピアノと弦楽合奏とは高まっていく。見事な睡蓮の景色の広がりを連想させる。

第二楽章アダージョ
水面を含んだ花壇を連想させる。極めて色彩的で美しい楽章である。

第三楽章アレグレット・モデラート
リズムのある色彩的な楽章である。

バラの門          モネ


ピアノ五重奏曲第二番ハ短調Op.115
♪♪

晩年の作品で、厳しく難解である。下の絵画を参考にして説明をしたい。

第一楽章アレグロ・モデラート
32才で亡くなった愛妻カミーユの面影を見ているような、不可解な印象がある。

第二楽章アレグロ・ヴィヴォ
急に強い風が吹いてきて、マフラーが靡いている。日傘を持つのがやっとである。

第三楽章アンダンテ・モデラート
カミーユが若くして亡くなったことに対する、虚しい感情が湧いてくる。

第四楽章アレグロ・モルト
カミーユの幻影はあたかも亡霊のように見えてしまう。

戸外の人物試作      モネ


ピアノ四重奏曲第一番ハ短調Op.15
♪♪

ヴァイオリン協奏曲第一番とならんで、青年時代の曲で、みずみずしく、メロディーは分かりやすく、具象的である。曲の風景も見つけやすい。希望が感じられ、前に前に進んでいくような雰囲気が感じられる。

第一楽章アレグロ・モルト・モデラート
目標に向かって前に前に進んで行くような積極性がみられ、メロディーも捉えやすく、希望に満ちている。

第二楽章スケルツォ
明るいスケルツォで、スキップで前進しているような印象を与える。

第三楽章アダージオ
この部分だけが短調の静けさを与えている。しかし、悲観的にはならない。そのうちに、より明るいメロディーに変わって来る。この曲に深みを与えている。フォーレの思い出がふと現れたかも知れない。

第四楽章アレグロ・モルト
しばらくして美しいメロディーが現れ、楽観的なイメージを与えるが、様々に展開して、最後はピアノとヴァイオリンとが美しいソナタを演じ、終曲に向かう。

シャトゥーのこぎ手たち                ルノアール

シャトゥーはセーヌのリゾート地として知られていた。こぎ手がいて、カヌーで河遊びが出来るようになっていた。ルノアールの後の妻アリーヌが流行のドレスを身にまとった姿で描かれている。


ピアノ弦楽四重奏曲第二番ト短調Op.45♪♪

この曲は短調のはっきりした厳しさが見られる。どの楽章にも一貫したのもがある。それを筆者はパリの冬景色とみたい。冬景色はパリでは珍しくない。冬になると雪景色になることが多いからだ。印象派で冬景色を書いた人は少ないが、マネもその数少ない一人である。この曲も常に短調の厳しさが伴い、どの楽章にも暖かさのような甘さが見られない。

第一楽章アレグロ・モルト・モデラート
短調の曲らしい厳しさが冒頭から見られる。それは雪の降っている様子を表していると考えても可笑しくはない。しだいに冒頭よりも雪は鎮まるが、寒さの厳しさは変わらない。暖かい甘さはこの曲には見られない。ピアノの音も何とも冷たげである。第一主題と第二主題を繰り返して終了する。

第二楽章アレグロ・モルト
同じようなアレグロであるが、幾分舞曲的である。ついに雪が降り出し景色を一層白くしている。

第三楽章アダージョ・ノン・トロッポ
冬景色の冷たい光景をゆっくりとしたテンポで表している。ピアノも弦楽も何かしら冷たい。

第四楽章アレグロ・モルト
重厚な弦楽で始まり、冬の寒さが厳しくなり、春はまだまだ遠くにある。うっとうしい雲色の空に、白い雪景色だけの世界である。
野鳥のかささぎが、寒さのため山から里に下りてきている。古い脚立(キャタツ)の上にとまっている。

かささぎ                モネ



組曲ペレアスとメリザント

 メーテルリンクの戯曲「ペレアスとメリザント」を手がけた作曲家は4人いる。ドビュッシー、シェーンベルク、シベリウス、そしてフォーレである。宿命的な愛と死を主題にして、お伽の国の神秘的なムードに包まれた象徴性が世紀末の作曲家の関心を引きつけたのかも知れない。フォーレはロンドンの演劇公演の付随音楽を作曲して、後にこれを4曲から成る組曲に編曲した。

ずっと昔、お伽の国のアルモンドのアルケル老王の孫ゴローは、狩りに出て森に迷い、泉のかたわらで泣いているメリザントを見つける。何処かの国の姫君のように美しい少女を城に連れて帰り、妻にする。メリザントは、ゴローの異父兄弟ペレアスと出会い、二人は密かに愛し合うようになる。その現場を見つけたゴローは、ペレアスを刺し殺してしまい、既にゴローの子を宿していたメリザンドも自ら刀を胸に立てて果ててしまった。

                         光る実        ©JUNKO KITANO

                   


1.前奏曲
♪♪
弦楽器が不思議な森の情景を描き出す。次第にゴローがメリザンドを見つけた喜びに高まっていくと同時に、不安と喜びの入り混じった感情を暗示している。遠くから狩りの角笛が聞こえはじめ、第1幕へと観客を誘う。

2.紡ぐ女♪♪
メリザンドが、お城の奥で糸を紡いでいる様子が描かれている。ヴァイオリンの細かな三連符で糸車の動きを表し、管楽器がメリザンドのけなげな姿を表しているかのようである。

3.シシリエンヌ♪♪
ペレアスとメリザントが密かに愛し合っている情景が想い浮かぶ。「ロマン派の風」が吹いている。ペレアスが吹く笛の音にメリザンドが聞き入っているような情景が想い浮かんでくる。単独でよく演奏される曲である。

4.メリザンドの死♪♪
第4幕でベレアスが死に、第5幕でメリザンドも後を追って自害してしまう。その第4幕と第5幕の間奏曲として使われた曲である。二人の悲劇的な死を遠い国のおとぎ話のように、不思議な雰囲気で表現している。すべてはお伽の国の出来事であるかのようである。遙かなロマンチシズムを漂わせている。


JUNKO KITANOの「光る実」の森の少女は、森の妖精のようではあるが、神秘的な雰囲気は、お伽の国の世界を表しているかのようである。


バラード 作品19♪♪

 このピアノ曲は、フォーレの比較的初期の作品であり、ロマンチックな感情をうかがわせている。フォーレのピアノ曲の中では14分をこえる絢爛豪華な作品である。(管弦楽に編曲されている)全体的には大きく三部に分かれていて、初めに舟をこぐようなゆったりテンポ進んでいく。豊かな和音は水面に輝く明るい光のように感じる。いったん休止して、ロマンチックで力強い部分に移っていく。半音階的な分散和音が微妙に現れて色彩的な効果をあげている。最後に半音階的な分散和音がゆっくりと流れて曲を終わる。

ショパン的なフレーズも随所現れる。ショパンのピアノ曲ではメロディーと情念が主流である。時として激しい感情の発露が見られるが、フォーレのピアノ曲では、メロディーより和声に重点が置かれていて、色彩的であると思う。

このバラードが作曲されたのは1879年で、印象派のマネやモネ、ルノアールが斬新な創作をつづけていた時期であった。印象派は、水面の光の変化に関心を寄せ、オブジェの光の反映を究明した。奇しくも、フォーレのピアノ曲も半音階的な分散和音に関心が寄せられ、メロディーから和声に関心が移りつつあった。つまり、ドラマチックな音楽から色彩的な音楽への移行である。次の絵画は、ルノアールの川面の光を描いた作品である。フォーレの和声的なピアノの音色は、
川面の光の輝きを感じさせるようである。

                                                              アニエールのセーヌ川            ルノアール

                    



ノクターン

 フォーレのピアノ曲は、フランスロマン主義と印象主義の見事に融合したものであり、ショパンと並び称せらるピアノ作品の結晶である。特にノクターンは傑作の誉れ高く、4分から7分位からなる大曲が多い。ドビュッシーの初期のロマン主義的なピアノ作品はフォーレのピアノ曲を受け継いだものである。ノクターンの心象風景は、ルノアール、モネ、マネ、モリゾなどの印象派の美しい作品と重なっている。

ノクターン第3番変イ長調♪♪

出だしのテーマが如何にもショパン風でロマン主義的な雰囲気が強い。次第に印象派的な柔らかく色彩的な響きに変わっていく。中間部で半音階的な深まりを見せる。そして前半を繰り返して終了する。

                                  食後        ルノアール

                                        

白っぽい服の女性は、女優のエレン・アンドレである。その女性の弟と言われている男性が当時珍しい紙煙草に火をつけている。何といっても気を引くのが中央の黒い服の女性で、コメディー・フランセーズの18歳の女優である。このころは駆け出しの女優であった。この清純な女優は、「テラスにて」にも登場しており、ルノアールのお気に入りモデルであったようである。ルノアールの最も美しい絵画の一つである。ノクターン第3番のロマン派風の響きが、この若い女優の雰囲気に合っている。

ノクターンの第4番変ホ長調♪♪

出だしのテーマが二人で舟に揺れられているようなロマンチックな趣がある。次に川面の光る波を見つめているような音楽になり次第に深まっていく。そしてもう一度前半を繰り返す。

                                 ニースの港         モリゾ

                                         

モリゾが1881年冬から1882年春にかけて娘ジュリーとニースに滞在した時の作品である。モリゾは港の真ん中に浮かべたボートから描いている。その筆致は天賦の才を示している。ニースの明るい光に映える波が見事に描かれている。水面に映る景色も波間に描かれており、深みのある表情を見せている。


フォーレの歌曲

 フォーレは、100曲以上の歌曲を残しており、中にはヴェルレーヌやユゴーの詩に書いたものもあり、音楽と文学の両面で研究の対象になっている。歌曲のすべてについて述べるのは不可能であるが、ここでは初期のみずみずしい歌曲♪♪を紹介したい。これらの歌曲は陽気で清純であり、同時代に活躍していたルノアールの幸福な絵画と比較すると面白い。

Op.1 No.1 蝶と花
Op.1 No.2 5月
Op.5 No.2 愛の夢
Op.2 No.1 修道院の跡の中で
Op.2 No.2 水夫
以上を続けてお聞き下さい。


                      ブージヴァルのダンス      ルノワール

                                    



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