グリーグ(1843-1907)

 ノルウェーの深きフィヨルドの街ベルゲンに生まれる。幼い頃より才能を発揮して、15歳でメンデルゾーンの創立したライプチッヒ音楽院に学ぶ。特にシューマン、メンデルスゾーンの影響を受ける。卒業して活動の場所を北欧に移すが、ドイツで学んだ西欧的な作風は変わることがなかった。彼は祖国の音楽家や民謡を取り入れて愛国的な作品を創作するが、ロシアの作曲家のように民族的な要素が濃く現れているようには感じさせない。彼がドイツの学校で音楽教育を受けたことと、北欧は西欧に当たり、パリやベルリンにさほど遠くないこともあると思う。

従妹のニーナと24歳の時結ばれ、生涯二人の愛は変わることがなかった。有名なピアノ協奏曲は翌年作曲され、浪漫派を代表する名曲として知られてる。ホルベルク組曲やペールギュントなどは、音楽史上第一級の作品である。ピアノの抒情小曲集は、ショパンの影響がみられる。


ピアノ協奏曲イ短調

 
チャイコフスイーのピアノ協奏曲と並んで国民楽派の傑作のピアノ協奏曲である。しかし、チャイコフスキーほどローカル色は感じさせない。それは、何よりもグリーグがドイツのライプチッヒ音楽院で音楽を学んだことが大きいと思う。彼はシューマンのピアノ協奏曲に深い影響をうけていた。クララ・シューマンの演奏を聞いて大きな感銘を受けていたとも言われている。

第一楽章♪♪
出だしは降下型の派手な出だしで始まるが、即上昇してノルウェーのフィヨルドのV字谷の雄大な自然を表している。次に現れる第一主題は、ピアノ協奏曲の中でも最も美しい。ニーナの面影があるのであろう。時折現れる自然の光景に北欧を感じさせる以外は、実に西欧的な洗練された協奏曲である。浪漫派の風も頬をなでるように吹いている。音楽史上第一級の協奏曲である。

ノルウェーのフィヨルド


                              グリーグ

                            深き谷間に 囲まれた
                            フィヨルドの街に 育ちたり
                            春は遅しと 言へれども
                            百花繚乱の 五月(サツキ)なり

                            幼き頃より 才能の
                            恵まれたりし 君ならば
                            十五の春に ゆきたりや
                            ライプチッヒ 音楽院

                            パリと並びて 称される
                            浪漫の街の メッカなり
                            僅か三年で 卒業し
                            超一流に なり給ふ

                            幼き頃より 憧れし
                            花の従妹 ありたりき
                            如何なる花に ましたりて
                            美はしきこと 限りなし

                            薄月のごと 慎ましく
                            薔薇の如く 美しき
                            望月のごと 満ち足りて
                            ふくよかにして 魅了する

                            数ある試練 ありたれど
                            永遠の愛への 誓いなり
                            二人で掴んだ 結婚なり
                            今は憂いは なかりけり

                            愛にし燃えて 燦(キラ)めきて
                            愛にし酔ひて  融(トロ)けたり
                            愛にし踊り 時めきて
                            捧げらるかな 協奏曲

                            頬をなでたる 潮風よ
                            何をか二人を 離さんや
                            限りなきたる 水平線
                            永遠の愛こそ 今ここに

第二楽章♪♪
愛の感情をいっぱいに含んだ、濃厚な緩徐楽章である。憂いのない楽章で、時のグリーグの喜びが伝わってくるようである。高まるフレーズもメロディーが美しい。

©武内直子原画集U


第三楽章♪♪
踊るようなロンド形式であるが、音楽性は高くドラマチックでもありロマンチックでもある。

セレス神殿への参道    アルマ・タデマ


ホルベルグ組曲

 1884年ノルウェー文学の父ホルベルグの生誕二百年にあたり、ホルブルクの時代(ヘンデルと同時代)と同じ形式(組曲)で曲を書き、弦楽合奏の曲として完成させた。事実上の弦楽セレナードであり、モーツアルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」やチャイコフスキーの「弦楽セレナード」に匹敵する名曲である。古きよき時代を想わせるメロディーと浪漫派の風が吹く美しい組曲である。

前奏曲♪♪
メンデスゾーンのイタリアの第一楽章想わせる陽気な出だしで始まる。夏の海を想わせるような清々しさがある。

銀色(鯉)のお気に入り  タデマ


アルマ・タデマは、英国十九世紀ヴィクトリア朝の画家で、当時の貴人に好まれた古代ローマの風景を借りて絵画を描いた画家である。フランスの新古典主義に相当する画風であるが、浪漫派的な側面もみられ美しい絵画が多い。この絵では、背景を地中海にとり、三人の乙女が鯉に餌をやっている光景を描いている。透明な地中海のイメージが清々しい。

サラバンド♪♪
緩徐楽章になる。瞑想的な雰囲気を持つロマンチックな曲である。


天使の奏楽     ブーグロー


ガボット♪♪
喜びが湧き上がってくるような優雅な曲である。

意見のくいちがい    タデマ


アリア♪♪
悲しげな雰囲気の曲である。しかし、浪漫派的なロマンチシズムは失わない。

アドニスの死                  ウォーターハウス


ヴィーナスは愛するアドニスに狩りに森に行くのを止めるが、アドニスは言うことを聞かず、ついに森の獣により倒されてしまう。血を流して倒れているアドニスを見つけて介抱するが、それも無駄であった。アドニスの血の跡から咲いた花がアネモネであったという。


                              ヴィーナスの恋

                            言い寄りたりし あまたあり(ヴィーナスに)
                            受け身の愛に ありたりや
                            自ら恋す 初めての
                            憧れたりし アドニスよ

                            少年のごと 甘き顔
                            純真なりや まなざしの
                            何故か愁ひを 秘めたりや
                            年甲斐なくも 惚れたりや(ヴィーナスが)

                            母なく育つ アドニスよ
                            愛に飢ゑたる アドニスよ
                            優しき愛で 抱(イダ)かれば
                            乳房を愛し 甘へんや

                            年頃なれば 求めたる
                            愛の行為に 導きて
                            二人伴にて 極まりて
                            愛の歓び 酔ひたりし

                            永遠(トワ)の人とも 想ひたり
                            愛の宴は つづかんや
                            雲のしとねに 伴にあり
                            天の祝福 彩(イロド)らん

                            冥府の女神 ペルセポネ
                            冥府によびて アドニスを
                            己のものに なさんとす
                            嫉妬に狂ひ 謀(ハカ)りたり

                            狩りを勧めん アドニスに(ペルセポネが)
                            ヴィーナス止めて 諭せども
                            狩りに夢中に なりたりや
                            されども罠に はまりたり

                            アレス(元ヴィーナスの愛人)猪に 変身し
                            アドニス襲ひ 倒したり
                            血を流したる アドニスを
                            介抱すれど 甲斐なしや

                            ヴィーナス歎き 悲しみて
                            アドニスの血に ネクター(神酒)を
                            注ぎにけりや 涙して
                            永遠の恋人 失へり

                            視よ!血の跡に アネモネの
                            紅き花にぞ 咲きにける
                            人々語る アネモネを
                            アドニスの花と 呼びたりや



リゴドン♪♪
陽気な舞曲であり翼で羽ばたいていくような雰囲気がある。中間部にロマンチックな時めきがあり、再び大きく羽ばたいて飛んでいく。

アモールとプシケー      ブーグロー


プシケーは、様々な試練を受けるが、愛の神アモールに助けられ、蝶の羽を与えられて、アモールと伴に天の国へ飛んでいく。



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