サン・サーンス(1835〜1921)

 サン・サーンスは、フランスの19世紀のロマン派音楽の最も重要な作曲家である。彼は19世紀のモーツアルトと言ってもよいほどの神童であり、7歳の時モーツアルトの協奏曲を公開演奏した。13歳にはパリ音楽院(コンセルヴァトワール)に音楽家として迎えられた。作曲も早くから始められ、15歳の時に「交響曲イ長調」を作曲した。この曲は傑作であり、その後の交響曲と比較しても遜色ないものである。またサン・サーンスは、交響曲、協奏曲、交響詩、オペラ、オラトリオ、カンタータといったあらゆるジャンルに優れた作品を残しており、19世紀フランスを代表する大作曲家である。また、音楽だけではなく、画家、詩人、哲学者、教育者でもあった。

サン・サーンスは、典型的なフランスのエスプリをもつ芸術家であり、ロマン派の作曲家であるばかりではなく、グルックやラモーのオペラを評価するなど、フランスの伝統的な芸術にも大きな関心を示した。彼はゲルマン系のロマン主義とラテン系の古典主義を統一しようとしたとも言われている。19世紀後半のワーグナー主義に対して、フランス的な明朗典雅な音楽を防衛しようとしたとも言われる。

しかし、彼をアカデミーの俗物であるとする考えは間違っている。サン・サーンスは若い頃から先進的であり、ローマ大賞を二度も逃している。彼が決して保守的な芸術家ではなかったことの証明である。

交響曲イ長調
 この交響曲は、パリ音楽院で15歳の時に作曲されたものであるが、後の交響曲と遜色ない出来を示している。 むしろその爽やかでナチュラルな美しさは、サン・サーンスの驚くべき早熟性を示している。全曲を通して頬を撫でるような爽やかな「ロマン派の風」が吹いている。

第1楽章♪♪
ロマンチックな序奏から颯爽とした第1主題が現れる。英雄的な雰囲気になる。次に未来に夢を抱くような美しい第2主題が現れロマン主義的な色彩を濃くする。15歳のサン・サーンスの若々しい力強さを読み取ることが出来る。ベートーヴェン的な展開部も見事である。再び主題を繰り返す。

第2楽章♪♪
美しい賛歌である。ロマン派でもこの様に美しい楽章は多くはないと思う。中間部は苦悩を感じさせる荘重な響きをもつ。賛歌とのコントラストが素晴らしく、ロマン主義的である。


                            マーシーの夢     「天路歴程」

                                        

第3楽章♪♪
ベートーヴェン的なスケルツォであるが、音楽的にも優れていて、メロディーが美しい。

第4楽章♪♪
前進的で明るい終楽章である。愛国的な心情の高まりを感じさせる。フランスの前途を祝しているようである。フィナーレにより加速されて曲を終わる。

                           ダンス                        カルポー

                                           

彫刻家カルポーはフランスの19世紀と伴に生きた人物である。「ダンス」は、パリ・オペラ座の正面に飾り付けられた彫刻である。フランスの希望と前途を祝した明るく力強い作品である。19世紀のパリは多くの革命や動乱を経験するが、市民は常に進歩と勝利を確信していた。このような愛国的な作品であると思う。

ピアノ協奏曲第1番

 力強い英雄性と優雅なロマンチシズムを兼ね備えたピアノ協奏曲である。

第1楽章♪♪
ホルンの音から始まるが、このほかにも幾つも現れるし、終楽章にも出て来て、この協奏曲に一貫したイメージを与えている。これは風雲急を告げる革命・動乱の合図であると思われる。

開戦の合図のような主題がオーケストラにより提示される。ピアノもその主題にそって弾かれる。展開部になり、ピアノの力強さを増し、開戦の合図に乗りかかるように弾かれていく。

国を守り武器を取れ      ロダン


第2楽章♪♪
この楽章は葬送の曲である。革命で死んだ同志を追悼している。ピアノが美しく燦めくが、まるで勝利の女神が彼らの一人ひとりに、永遠の命を与えているかようである。

第3楽章♪♪
ベートーヴェン的な明るく力強い終楽章である。次第に高まり、ピアノも華麗になり曲を終わる。ホルンも鳴り響き革命の勝利を祝しているようでもある。

ロダンの「国を守り武器を取れ」は普仏戦争の開戦の時に立てられたモニュメントである。勝利の女神が、国民を力強く鼓舞している。開戦の合図に呼応しているかの様である。

ヴァイオリン・ソナタ第1番

 サン・サーンスの音楽は、19世紀フランス・ロマン派の華であると考えてよい。ドイツ・ロマン派の一方的な観点からでは十分に理解できないと思う。サン・サーンスは、またフランス17.8世紀のフランス音楽の真価を認めようとした人でもある。サン・サーンスのヴァイオリン・ソナタは、彼の作品の中でも最も評価の高い作品である。フランクのヴァイオリン・ソナタはサン・サーンスのより1年後に作曲されている。サン・サーンスのヴァイオリン・ソナタは、透明な感性とロマン派的な感動が見事に融合した作品になっている。

第1楽章

第1部アレグロ
♪♪
ロマン派的なドラマ性と透明で時めくような美しさからなる素晴らしい曲である。ピアノの泡立つような音は、将にヴィーナスの誕生を想像させないだろうか。

                      ヴィーナスの誕生              カバネル

                                    

このヴィーナスは、フランス第二帝政の時のアカデミーに出展されたもので、多くの人々を魅了した。時のナポレオン三世も自ら購入してまでも好んだという。このビーナスの上半身は、単に身を横たえているだけではなく、顔の表情などにもいえるが、限りないロマン性を表現している。眠れる美女でもあるような気がするし、河に身を投げたオフェーリアのようでもある。一見すると古典的な絵画であるが、内容的には限りないロマンチシズムを喚起する絵画であると思う。

第2部アダージョ

第2楽章

第1部アレグレット・モデラート

第2部アレグロ
ロマン派的なドラマ性とヴァイオリンの透明さが融合した美しい作品である。第1楽章の海の泡のようなテーマが再現する。ロマン派的な感動の極致になり曲を終わる。



Top page