ウィーン前古典派

モン
(1717-1750)

ウィーン生まれの才能のある音楽家であったが、僅か33才で肺結核亡くなり、18世紀前半のバロックから古典派に至る前古典派の特徴を示している。雰囲気的には、C.P.E.バッハと似ており、神韻縹渺とした高い音楽性を示している。彼がグルックのように18世紀後半まで生きていたら、ウィーンの前古典派の最大の音楽家になっていたであろうと、「西洋音楽の歴史」で有名な柴田南雄は述べている。功績としては、ごく一部であるがメヌエットを含む4楽章形式を取り入れたこと、対照的な第二主題を取り入れたこと、展開部の確立などが挙げられる。また歌うようなメロディーなど、才能を感じさせられる部分が多い。彼の音楽の下地には、イタリアのヴィヴァルディやコレルリの影響があるようだ。

クラヴサンと弦楽の為の協奏曲ト短調♪♪

この曲の原曲はチェロと弦楽の為の協奏曲ト短調である。後にクラヴサンに書き改められたが、この曲は音楽史上有名で、20世紀に入りシェーンベルクが自分の作品の中に組み入れている。クラヴサンの神韻縹渺とした音色が素晴らしい。このようなクラヴサン曲を残したのは、フランソワ・クープランの独奏曲、C.P.E.バッハの二つのクラヴィアの為の協奏曲、ウィーン古典派のマリアンナ・マルチネスのクラヴサンによる曲などの名が浮かんでくるが、めったに味わえるものではない。やはり、天才的な作曲家としかいえない。それに比べるとハイドンのクラヴィア曲は練習曲のようで、とてもモンには及んでいない。また、歌うような抒情的な音楽も天才性を物語っている。

第一楽章
歌うような、少し影があるが素晴らし楽章である。クラヴサンの神韻縹渺の響きが何とも言えない。

第二楽章
歌うような美しい楽章である。クラヴサンの独奏は神韻縹渺とした音色であり、誰でもまねの出来ない才能である。演奏者の技量によるところも多い。

第三楽章
影のあるメロディーの美しいアレグロである。何かドラマを思わせるところがあり、ロマンチックな楽章である。クラヴサンも上品で縹渺としている。




ヴィオリンと弦楽の為の協奏曲変ロ長調♪♪

前曲と比較すると明快典雅であり、ロココスタイルを感じさせる名曲である。美しいメロディーも生きている。ヴィヴァルディの影響があるようだ。
バロックから古典派への架け橋になっている。

第一楽章
明るい出だしで始まり明快典雅でロココスタイルを想わせる。ヴァイオリンの演奏にヴィヴァルディを感じさせるところがあるようだ。

第二楽章
美しいラルゴで事実上ヴァイオリンの独奏で、優雅な独奏であり、限りなく美しい。

第三楽章
活気のある終楽章。ヴィオリンの独奏も優雅で美しい。




シンフォニアト長調♪♪

J.C.バッハやJ.C.Fバッハのシンフォニアに比較すると若干重厚に聞こえるが、縹渺とした印象は高い音楽性を感じさせる。

第一楽章
厚みのある音であるが、縹渺とした雰囲気は高い音楽性を感じさせる。バロックから古典派へ行く架け橋である。

第二楽章
メロディーも慎み深く、蔭りのあるロココスタイルのワトーの絵画を連想しそうだ。

第三楽章
古典派の音楽になりきっているが、深みのある縹渺とした音楽が特徴である。




シンフォニア変ロ長調♪♪

第一楽章
メロディーの一貫性があり、良く出来た格調の高い第一楽章である

第二楽章
メロディーの美しい、慎ましく優雅な緩徐楽章である。

第三楽章
プレスト。テンポの速い楽章だが、軽率さはなく、深みと縹渺とした雰囲気が占めている。




ヴァーゲンザイル(1715-1777)

ヴァーゲンザイルはウィーンの名門に生まれている。彼は当時著名なフックスに、音楽理論やオルガンを学び、フックスの推薦で、ウィーン宮廷作曲家の地位を与えられる。1845年にイタリアへ修業に行き、ヴェネチアでオペラ「アリオダンテ」を上演をした。ウィーンに帰り、ハプスブルクの王子のクラヴィアの教師になる。その後イタリアに行きJ.C.バッハと知り合っている。また、パリにも訪れギャラントスタイルも身に着けている。彼は宗教曲から、オペラやオラトリオ、また器楽曲も数多く作曲している。ハイドンもウィーンで、桂冠詩人メタスタジオの紹介で、ウィーンの音楽家グルック、ヴァーゲンザイル、ハッセなどと知り合っている。

ピアノフォルテとヴィオリンと弦楽の為のイ長調♪♪

二つ楽器のための協奏曲で、パリやロンドンで盛んだった協奏交響曲の形式を取り入れている。何故か音楽の盛んなウィーンでは流行らなかった。イタリア的な明朗な詩情があり、古典派的な明快さと詩情を湛えており、モーツアルトのザルツブルク時代のディヴェルトメントやセレナードと重なる雰囲気を持っている。

第一楽章ヴィヴァーチェ
イタリアのチマローザやマンハイム楽派のカール・シューミッツと共通した明朗なロココスタイルの美しい楽章である。ピアノフォルテは、この時代には強弱の変化が弱かった為に余り目立たない。ヴァイオリンがやはり目立っている。ピアノフォルテ協奏曲の先別をつけたのはJ.C.バッハの晩年の作品である。その影響に、モーツアルトが本格的なピアノ協奏曲を編み出した。ザルツブルク時代のモーツアルトのピアノ協奏曲は18世紀のロココスタイルの最も美しい華である。

第二楽章ラゲット
ヴァーゲンザイルの緩徐楽章は、全体的に大変繊細でまさにロココスタイルを意識している。ロココの華は女性的なあでやかさなので、あえて繊細に表現したのであろう。この楽章ではピアノフォルテとヴァイオリンの美しい掛け合いが見所である。

第三楽章メヌエット
三楽章にメヌエットを持ってくるのは、本格的な交響曲がハイドンによって編み出されるまでは、ディヴェルトメントやセレナードの三楽章によく置かれていた。優雅な彩りを与えている。




フルートと弦楽合奏と通奏低音の為の協奏曲♪♪

第一楽章アレグロ
フルートはこの曲に華を添えており、ロココスタイルのフランス風な楽章である。現在のヨーロッパの民謡でも、一番よく出てくる楽器はフルートとヴァイオリンである。

第二楽章ラルゴ
フルートで美しいメロディーが奏でられる。あでやかで抒情的な曲である。カデンツァも工夫されている。

第三楽章アレグロヴィヴァーチェ
踊りたくなるような舞曲である。舞曲も本来はフランスが源流である。それを最も伝統的に受け継いだのがロシアであった。それはバレーとして受け継がれていった。





ハープと弦楽の為の協奏曲ヘ長調♪♪

珍しいハープ協奏曲である。モーツアルトのフルートとハープの為の協奏曲に至る過程にある曲である。
フランスでは好んでハープが弾かれたらしい。

第一楽章アレグロ
ハープが予想を超えたロマンチックな演奏をしていて、弦楽は同じような楽想を繰り返しているだけである。

第二楽章アンダンテ
繊細で抒情的なハープが奏でられていく。少しメランコリックな雰囲気を感じるハープの楽の音である。悲観的にはならない。このような繊細なハープの曲を作曲したのはヴァーゲンザイルだけではあるまいか。女性的なロココスタイルが好まれた18世紀独特の繊細な曲である。

第三楽章メヌエット
ここでも三楽章はメヌエットである。美しいハープの楽の音にうっとりしそうである。最も詩情豊かな楽章である。泉が湧き上がるようなイメージで終わる。





シンフォニー ト長調 WV418♪♪

ヴァーゲンザイルのシンフォニーは、まだ三楽章形式でシンフォニアと言った方が正確である。四楽章形式は、ハイドンから本格的に始まっている。ハイドンが三楽章にメヌエットを入れたのは、憶測だが、J.C.バッハにメヌエットのあるシンフォニアがある。モンにも一曲ある。また、三楽章に協奏曲やディヴェルトメントやセレナードに三楽章にメヌエットが使われることがよくあった。マンハイム楽派が四楽章形式のシンフォニーを作ったとよく言われているが、筆者は一曲も聞いたことはない。ハイドンが当時の様子を鑑みて四楽章の交響曲を本格的に書き出したのではないかと考えている。

ハイドンは、ウィーンに比較的近いエステルハージー侯の副楽長を勤めるときに、三曲の四楽章の交響曲を作曲したが、それが大変な傑作で、エステルハージー侯も大層気に入って、侯自らが「朝」「昼」「晩」と名付けたことに、ハイドンが大層満足して、四楽章形式の交響曲を作ったのではないかとも考えたりしている。あの三曲はハイドンの傑作の一つで、今でもよく演奏される。「朝」「昼」「晩」だけでCDも発売している。

ハイドンの師であり前古典派のヴァーゲンザイルに四楽章形式のシンフォニーがないのは以外であった。しかし、ハイドンの師としてもよいほどの傑作もある。ト長調の交響曲もその一つである。

第一楽章ヴィヴァーチェ
第一楽章はベルリン学派のC.P.E.バッハとよく似た疾風怒濤的な楽章で力強い男性的な気迫のある楽章である。一足先にベートーヴェンが現れたのではないかと思うほど迫力がある。

第二楽章アンダンティーノ
緩徐楽章は、メロディアスで完成度の高い曲である。ロココスタイルを踏まえていると言ってよいと思う。思い出に残る曲である。

第三楽章アレグロアッサイ
またもや疾風怒濤的な楽章で、ベルリン楽派を思わせる。力強い気迫にあふれた楽章である。





シンフォニー変ニ長調 WV438♪♪

第一楽章アレグロ
やはり力強い気迫のあるベルリン楽派的な第一楽章である。ハイドンでいえば40番台の短調の交響曲の出だしのようである。

第二楽章アンダンテ
打って変わって、メロディーの美しい曲でロココ調の典雅な楽章である。

第三楽章ヴィヴァーチェ
再び疾風怒濤的な曲で、真夏の嵐の様な曲である。








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